【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

釧路湿原上空450m!

気温は低いが天気は上々、風も凪いでいる。どうやら飛行機で飛ぶには絶好のコンディションらしい。
すでに格納庫を出た機体は、今にも青い空へ舞い立たんばかりに身構えている。点検の終った機体からエンジンの轟音が響いてくる。
「行きますか!」。ヘルメットを付けて準備万端、心はすでに上空へ舞い上がっている。
エンジン音がひときわ高くなる。スピードが上がる。滑走路の端が見えてきた、と思ったら、フワッと浮き上がった。風になったみたいだ。地面が急速に遠のいて行く。離陸2分。東京23区がすっぽり入るという壮大な釧路湿原が目の前に広がった。まるで日本じゃないみたい。
パイロットのヒトシさんが前方を指差した。遠くに真っ白な雄阿寒岳雌阿寒岳が空に浮かんでいる。眼下には青く蛇行する釧路川
日本広しと言えども、この光景を上空から見た事のある人間は、数百人に満たないんじゃないか?1億3千万分の数百、という貴重な体験をいままさにしているのだ。この光景を記録せずにおくもんか!シャッターを押しまくった。
セスナに搭乗したことはあるが、ウルトラライトプレーンは初体験だ。風が直接当たるので、完全防寒しても寒いだろうな、と覚悟はしてたが、コーフンしてるせいか、それほど寒さを感じない。揺れも思ったより少ない。「最高だ!」
天と地の間に浮遊する人間になった。いや、鳥の気分になったのかもしれない。機は釧路川を上流に遡り、やがてぐるりと反転して湿原の中央部を横切り戻ってきた。飛行時間30分。地上に降り立つと、「ウフフッ」何故か分らぬが思わず笑いがこみ上げてきた。
高度はどの位だったのだろう?ヒトシさんは「450m位です」と教えてくれた。
午前と午後、都合3回、機上の人となった。低空から上空へ。水平から旋回へ。僚機との並行飛行もあって、手を振り合ったりした。轟音を響かせて次々と僚機が飛び立っていく。殆どセスナのような速い機体もあった。
気付いたことがあった。パイロット達は飛行機を語る時、少年のような眼になる。それは空が育ててくれた眼だろうか、それとも飛行機が育ててくれた眼だろうか?第二次世界大戦前の航空兵のことがチラッと頭をよぎった。
いずれにせよ、自分はヒコーキ乗りにはなれないと思った。彼らは愛機を自分で調整する。まるで子どもを扱うように優しく愛機に向かい合う。やっぱり、機械が好きじゃないとヒコーキ乗りにはなれないのだ!機械が苦手のワタクシは、ただ搭乗させていただくことしか能がない!