【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 独活の大木

独活。なぜこの文字を「ウド」と読むんだろう?
開いてみれば「独り」「活きる」である。“山独活”ともなれば、世間の風など我知らず。泰然自若の仙人みたいな趣がある。
だが、山ウドは株となって群生してることも多い。決して「独りで活きてる」ワケじゃない。
辞書によると、『独活:ウコギ科多年草。山地に自生。茎の高さ約2m。葉は大形羽状複葉。
若芽は食用とし、柔らかく芳香がある。根は漢方生薬の独活(どっかつ)で発汗・解熱・鎮痛剤になる』とある。
『茎は大きくなるのに中味は柔らかくて役に立たないところから、身体ばかりは大きいが役に立たない人のことを「ウドの大木」などとも例えられる』
それはともかく、阿寒ではウドのシーズン真っ盛りだ。近所のオジサンから声がかかった。
「ウド、行くかい?」。モチッ!である。
「オレも、もう歳だからナァ、そろそろ若いモンに場所教えておいてやんなきゃならん」。オジサンは車の中で言った。「足腰弱って来たからなぁ」。
車で5分。秘密の場所だ。モチロン、山の中である。車から降りて藪に入った途端!「ホラ、そこにあるよ!」「ここにもある!」。
同行したオバチャンもコーフン気味だ。モタモタしてる自分を置いて、まるで水を得た魚のように生き生きしてる。
その動きの早いこと!早いこと!斜面をドンドン駆け上っていく。「どこが足腰弱ってるんだよッ!」
イチバン年下で身体もチンコイのに、「独活の大木」とはオレのことじゃんか!

フウフウ言いながら、斜面の頂上へあと一息。ふと、上を見上げた。
すると眼前に青空を背負った山ウドが1本、風に揺れていた。威風堂々、独立独歩、我世情に関せず・・・その山ウドは、泰然自若として空を目指していた。
「なるほど確かに“山独活”の文字がピッタリだ!」。尊大な感じがする!
その夜は、ウドづくしだった。ウドの天ぷら、ウドのキンピラ、酢味噌和え。野の風が身体の中を吹き渡っていく。発汗はしないけど、医食同源、身体にはいいに違いない。
そう、ウドは役に立たないどころじゃない。身体と食費に大いに貢献するのである。