【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

終の棲家!


「いやぁ、やっと目的地に到着したらしい。おやおや、石楠花が咲いてるじゃんか。フムフム、景色はそう悪くない。緑が一杯だ。
それにしても疲れたなあ。定住先に着くまで、随分時間がかかった。
何しろ「この家のオバサン」に水を混ぜられ、こねられ、千切られ、曲げられ、ようやくカタチにされたのがもう6ヶ月も前。
それからはず〜と放って置かれた。永遠の時間が経つとも思えた。もっとも、登り窯に火入れするのは年に2〜3回だと言うから、それもむべなるかな、かも知れん。
熱い思いをした焼入後、箱に詰められ、揺すられて長〜い旅。着いてみたら、北の大地だ。よもや北海道に運ばれるとは、思ってもみなかった。一緒に焼かれた皿君も一輪挿し君も思いは同じだろう。皆、熱海あたりの土着者なんだから。
まあ、放って置かれれば、あのあたりで安穏な一生を送れたんだろうが、焼き物に向いてる土と見込まれたんだからしょうがない。少しは人間共のお役に立つのもいいだろう。
その意味で、到着した途端、大喜びされたのは大いなる救いだった。
しっかし、天気悪いなあ。北の大地、北海道じゃ、梅雨がないと聞いてたんだけど、これじゃまるで梅雨の空だ。
雲が厚い!寒い!何とかなんないのか。今頃湘南じゃ、夏の足音がドカドカしてるに違いないのに。
この分じゃ、あの目くるめく夏の日差しは今年は、いや、これからは浴びれぬかもしれぬ。何しろ温暖化という奴が、地球をおかしくしてるからなあ。
人間共は国際会議を開いたり、新エネルギーの開発促進に必死になってる。
そういえば、昨日の東京都議会選で民主党が自公を過半数割れに追い込んだそうだ。来る衆院選はどうなるだろう。
ま、どちらが勝ってもあまり変わりそうもないが、温暖化対策だけはキッチリやって欲しい。
もっとも、すでにカタチになってしまったオイラは地球環境がどう変わろうと、ある意味じゃずう〜と存在し続けることになりそうだ。
何百年か後、人類がどうなってるかをこの眼で見ることもできるだろう。多分、ここがオイラの終の棲家になるんだろうから。
エッ、安心するのはまだ早い、だって?そうかあ、オイラの持ち主はきっとオイラより早く死んじまうからなあ。その時オイラはどうなるんだろう?」