【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

脱皮!

「生きる」という意味は何なんだろう。紅葉の小枝の上にそれを見た。
セミの羽化である。そのセミは、いままさに羽化を終えたところだった。抜け殻に止まって微動だにしない。いや動けないのだ。羽がまだ飛べるほどには乾いておらず、全身が薄い緑だ。濃い茶色の眼が訴えるようにコチラを見ていた。「見逃して!」。

もし、彼を見つけたのがカラスなら、間違いなくその場で絶命してただろう。
エゾハルゼミか?それともヒグラシか?オンチの自分には分らない。だが、濃い茶色の眼が脳を貫いた。
辞典によると、セミは孵化後、地中で5回の脱皮を経て成虫になる。その間、大半は6〜7年、長いものでは17年、36年なぞというものもいるらしい。天敵から逃れ、地中で膨大な雌伏の時間!晴れて成虫になったとしても、その命は10日〜20日だと言う。はかないのか、それとも充実してるのか?
成虫としての生命の始まり、オトナへの脱皮の第一歩を、記録しておくべきだろう。17:20。カシャ!
もし、発見がもう1時間早かったら、羽化の一部始終に立ち会えたかもしれない。
夜から大雨だった。「あのセミは、無事飛びたてただろうか?」
翌日小振りの中、昨日の小枝を見に行った。
「居た!」
彼のセミは、小枝の先端にしがみついていた。冷たい雨に震えてるようにも見える。昨日同様、微動もしなかった。だが、そこには生命の気配があった。大空を飛ぶ意思があった。
イチローは、オリックス・ブルーウエーブからシアトル・マリナーズへと旅立っていった。いまや押しも押されぬ、超一流のメジャーリーガーである。その間、どれぐらい脱皮を重ねてきたのだろうか?
言うまでもなく、ヒトも生涯を通じて脱皮する。しかもセミと違って、無限に脱皮できる。なんなら、毎日でも、年齢が行っても、脱皮できる。
それをセミに教わったような気がした。自然は教えてくれることが多い!