【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 カラスアゲハ!

ジッと待つ。息をひそめる、身じろぎしない。1本の杭になって、紫色のユリを凝視する。ある隣人はこの花を「鉄砲ユリより遥かにデカイから、大砲百合」と名づけた。
カサブランカだよ」というご婦人もいたが、「カサブランカは白だべさ。紫色はあるのかい?」という人も。それにしても華麗、と言うより妖艶だ。成熟した匂いを辺りにバラマイてる。

ユリの花言葉は「純潔」「無垢」「威厳」。カサブランカは「壮大な美」だ。だが、このムラサキ大砲ユリには「妖艶」や「成熟」を加えてもいいんじゃないか?
どうして1本の杭になったか?それは、つい3分前に見かけた飛翔体のせいだ。
黒い飛翔体がどこからかヒラ、ヒラやってきて、ムラサキ大砲百合にとまったのだ。体長10cmはあった。黒い翅が魔女のような神秘さを醸し出してる。
「カラスアゲハだ!」。小学生時代、夏休みの宿題の標本採集が鮮やかにフラッシュバックした。そういえば、カラスアゲハの標本が、郡のコンクールで金賞を取った。
自分への金賞をもう一度!で、息を凝らしてシャッターチャンスを待つことにした。
だが、コチラの恋心を知るはずもない。カラスアゲハは1つの花に留まることなく、すぐ次の花に。まさに♪菜の葉に飽いたら、サクラにとまれ♪状態になる。
遠くへ行ってしまって暫く帰ってこない時間もあった。杭になること37分。ようやく何とか納めることができた。
「人生、辛抱だ!」どこからともなく名横綱の言葉が浮かんできた。そうだよ、そうだよ、最近皆、辛抱なさ過ぎる!だから「誰でもよかった」殺人なんかが頻繁に起こるんだ。何事も自分の思い通りにゃ行きはせんのに。
イライラするなよ、思い通りにいかぬのが当たり前なんだ。ことに生き物相手だとね。「自然から教わることは多いね!」おや、選挙カーだ。手振ってやろう。

※図鑑で調べたら、カラスアゲハと思ってたチョウチョは、ミヤマカラスアゲハのようだった。それもどうやら雌らしい。どうしてそう思うのかって?ヒントは写真の中にあります。