【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 サクラマスの生命力!

急流の「巻き返し」に真っ赤な紅葉の枝がゆらゆらと揺れてる。
「アレッ、紅葉、どこから流れてきたんだろう、山の上はもう紅葉真っ盛りなんだろうか」。でも待てよ、幾ら山の上でも紅葉にはまだ早すぎる!ヤナギだって青々してるのに…。
その時、「紅葉の枝」が流れに逆らって、上流に向かってユラリと動いた。

「魚だ、魚が遡上してるんだ!カラフトマスだ」だが、正しくはカラフトマスじゃなかった。
今まで1度しか見たことのないサクラマスだった。尾の部分はすでに白化してるのが水を通して伺える。すでに放精を終ってしまったのだろうか?死を待つばかりなのだろうか?それでも上流を目指してる。スゴイ生命力である。
実はサクラマスの名は、サクラの咲く頃遡上してくることから付けられたものとばかり思ってた。
従兄弟であるサツキマスも同様、5月ごろ遡上してくることから付けられたもの、と思ってた。だが実は、まったくの誤解だった。
婚姻色(産卵期を表す体色の変化)の鮮烈な赤色から命名されたことが分った。見た目にはむしろ、“モミジマス”の方が近い感じだ。

サクラマス―[硬骨魚網サケ目サケ科] カムチャッカ半島南端から神奈川県に分布。淡水生活型のヤマメのうち銀化(ギンケ)と呼ばれ、50%以上が雌である。
“淡水生活”2〜3年で、海に下り近海を回遊、一年後に再び川に遡上、産卵する。体長50cm〜70cm。その魚体の美しさ、引きの強さなどから、陸封型のヤマメと同様、釣り人垂涎の魚のひとつである。だが、北海道では残念ながら資源保護のため、禁漁魚になっている。
雄の婚姻色の鮮やかさには目を見張るものがある。
「オイラを見ろ、オイラは強いぞ」といきんでるように、体側に極彩色のさまざまな模様が浮き上がる。
時々は3mもの魚止めの滝をジャンプして上流を目指すと言う。凄まじいまでの生命力である。子孫を残すために自らの死を賭す、そのエネルギーは壮絶とも言っていいだろう。
「今年は凄く上ってるよ、手で触れるくらいだ」。釣りの友人は言った。「川が死骸でいっぱいだ。あれが自分の子ッコや、いろんな動物を養うのさ。死んでも何かのお役に立つ、生命のリサイクルだべさ」
う〜ん、果たして人間は自らの死を賭してまで、次の世代に遺伝子を伝えるエネルギーを持ってるだろうか?ましてや、死んで他の生き物のお役に立つことがあるのだろうか?
少子高齢化の時代、何だかズッシリ重い荷物を背負わされてしまった。いやはや参った・・・。