【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 “500万年ジオゾーン”!

駒吉は感慨深くファインダーを覗いていた。3日後の20日、移住丸4年を迎える。アッという間の4年間だった。それにしても、ラッキーだったなと思う。

「まだ4年にもならんのに、もう20年も暮らしてるような顔してる」。そんな風に言われるのは『DISCOVER AKAN』をめざして動き回ったせいだろう。
「どこでも灯台下暗しさ!」と駒吉は思う。「東京人で東京タワーに上ったことのある奴はどれだけ居るだろう・・・」。

地元民は地元を知らない。ともかく、DEEPな情報は足で稼ぐのがイチバンだ。お陰でかなりの地元通になった。地元の人も知らないような水汲み場も知ってる。
だが、努力が必ずいい結果をもたらすとは限らない。
駒吉の場合はラッキーだった。散歩中、川原で化石を拾ったことが、移住生活後の太い柱となりつつある。実はここは、知る人ぞ知る化石の宝島だったのである。
500万年前の化石地層の上に地域全体が乗っており、しかもその時代の化石が露頭している場所なんて、日本広しと言えどもそうあるコトじゃない。これを町おこしや、観光・交流のコアにできないか?
駒吉はそう考えた。
阿寒シェル鉱山の常務を訪ねたことが転機になった。常務は見学や発掘体験などの協力要請に積極的に対応する姿勢を示してくれた。すでに、帯広や足寄の博物館や教育委員会からもオファーがあったという。
今年、これまでに4回の発掘体験ツアーが申し込まれた。今日は釧路の子ども会の人々。さらに、23日には5回目が予約されている。思いも依らないスピードだ。
米ローレンス大学地質学教授マーシャ・ビョーネルードは、「岩石から読み取る地球の自叙伝」(日経BP社刊)の中で、地球に刻まれた生物進化の足跡を読み解いた。
生物はことごとく、岩石の上に育ってきた。あらゆるものが、だ。あらゆる生物多様性が、岩石から生まれた。そのことにようやく気がついた世界は、いま名古屋で生物多様性を守る国際会議「COP10」を開催中だ。
ファインダーから目を離しながら、駒吉は呟いた。「ここを“ジオパーク(大地の公園)”ならぬ、“500万年ジオゾーン(500万年大地の郷)”もしくは“500万年ジオエリア”と名付けよう」
これなら、500万年後に生きる生物のさまざまな事象を発信できたり、商品化できたり、イベント化できる・・・。「何しろここにあるものすべてが、人類発生と同じ時代からの染み込んだ空気をもってるのだから・・・」
移住4年なんて屁にもならない。駒吉に“500万年ジオゾーン”が語りかけてくる。