【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

てんでんこ!

▼それまで、一部の地域や一握りの専門家の中でしか流通してなかった言葉が一気に広まることがある。「津波てんでんこ」という言葉が一気に広まったのは、去年の大震災後だった。
▼『「津波てんでんこ」とは津波が来たら他人にかまわず、それぞれに必死に逃げよという教えである。この言葉を広めた津波史研究者の山下文男さんも、岩手県の病院で今度の津波に襲われ、九死に一生を得た。津波の怖さを訴え続けてきた山下さんにして「想像をはるかに超えた」と岩手日報の取材に語っている。(2011年3月26日 毎日新聞「余禄」)』
▼山下文男さんは昨年12月13日永眠したが、「津波てんでんこ」は一気に日本中に広がり、教育現場や地域コミュニティ、地方自治体、さらには国の防災計画見直しを検討するきっかけになった。

▼一方で「津波てんでんこ」は、高齢者などの災害弱者を省みない利己主義的な発想という議論があるのも事実だ。本来「家族や隣人を愛するが故に、てんでん、ばらばらに逃げよ」という言葉であるにもかかわらず、だ。
▼昨日、東日本大震災は発生から一年を迎えた。政治家や官僚、科学者、電気事業者などのメルトダウン振りが分かって来るにつれて、無知や猜疑心、保身や隠蔽など、「津波」の文字を欠いた利己主義的「てんでんこ」がはびこっているような気がしてならない。
▼冬はいつかは終わる。希望が芽を膨らませてくる。政治家、科学者、官僚の皆さん、新しい芽を潰さないように、できるだけ早く花を咲かせるように、死ぬほどの努力をお願いします。犠牲となった約2万人のためにも、苦闘を続ける1億2千万人のためにも・・・。