【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

野中温泉!

▼三十代の頃、同世代の仲間から「温泉博士」と言われてた。多分同世代よりは温泉好きであったのと、浸かった温泉の数が多かったせいだろう。「温泉博士」と呼ばれるのはなんだかウレシかった。

▼なぜ、それほど温泉好きになったのか、理由ははっきりしてる。子供時代、行楽といえば点在する温泉に行くことが習わしだったからだ。温泉は多かった。お陰でどこの湯がどんな泉質なのか、結構覚えた。
▼この経験は後になってずいぶん生きる。学校卒業後、就職は、能登和倉温泉「加賀屋」という旅館だったし、宮城県鳴子温泉では、温泉郷の「保存版ムック本」制作を担当した。温泉、サマサマである。

▼その温泉好きが、一昨日、ヨダレものの温泉に初めて浸かった。「野中温泉」。こちらでは隠れた名湯である。阿寒湖から西北へ約15km、神秘の湖「オンネトー」(年老いた湖)に行く途中に湯煙を上げる。前々から入りたいと思っていたのだが、訪れる機会がなかった。
▼湯船を一見して気に入った。子供時代に体験した古そうな木の湯船。洗い場も木である。決っして新しくはないのに清潔感が漂ってる。この清潔感は、旅館業の決め手である。

▼硫黄の匂いのする湯にゆっくりカラダを浸す。42度前後。柔らかい湯だ。給湯口から滔々と流れ込む豊富な湯量。窓から注ぎ込む春の太陽。ご丁寧に材木の枕まで用意されてる。もはや、何も言うことはない。「この湯は活火山雌阿寒岳につながっている…」。地底との一体感…。

▼『「弱酸性泉低張性高温泉」なんて長ったらしい言い方だけど、単純に言えば硫黄泉』と女将は言った。ナトリウム、カルシウム、ラドン、石膏、その他もろもろの成分が溶け込んでるお湯。
▼「ミシュラン温泉版」があれば、間違いなくスリースターだろう。不肖ワタクシ「温泉博士」の評価はもっとすごい。青森県奥入瀬の「蔦温泉」、秋田県の「玉川温泉」に匹敵する、「北の張り出し横綱」だ!
ウチから約1時間15分、温泉に関して言えばいい所に住んだなぁ…。