【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 アメリカ動物殺戮物語!

▼「オオカミと人間」という本を読んでる。今から約30年前、ナチュラルジャーナリスト「バリー・ロペス」が上梓した珠玉の一冊だ。日本では1984年、草思社から出版された。
▼この一冊を、ニューズウイークはこう讃えてる。「偏見と誤解から、ひどく嫌われ、恐れられてきた動物を理解しようとする著者の執念は、戦慄を覚えるほどだ。これまでにはないユニークな本である」

(冬の硫黄山。蒸気を盛んに噴き出してる。エゾオオカミも見てた風景だろうか、2年前の写真)
▼本書では、オオカミの生態や特性、さらに人間との宗教的・歴史的・社会的・文化的かかわりをさまざまな角度から取材、オオカミ社会と人間社会のあり方に迫ろうとする。
目から鱗が落ちる記述の連続だった。中でも愕然としたのは、この200年間で推定7500万頭ものバッファローを含む、5億匹以上の動物がアメリカ人によって虐殺されたという記述。オオカミも300万頭以上が殺されたという。これほどの残忍な数字は、過去どこを探しても見当たらない。
(雪原を行くキタキツネ。キツネがアメリカ開拓時代にどのくらい殺戮されたかは分らない)
▼恐怖心、宗教上、ビジネス、スポーツ、娯楽…さまざまな理由からアメリカ人たちはオオカミを殺戮した。飛行機を駆って一日300頭ものオオカミ狩りに励んだハンターたちも多かったと言う。オオカミは“悪”、であった。
▼1630年、マサチューセッツ州でオオカミ駆除ための報奨金制度が議会を通過し、その後はオオカミ撲滅運動にまで発展、ついこの間の1970年代まで撲滅運動は続いたのである。

(阿寒湖アイヌコタン(部落)にあるチセ(家)。時にはクマの穴や地名となるいこともある)
▼記述は、先住民族とオオカミの関係にも迫る。インディアンにとって、オオカミは「ハキハナ族」などの部族名にも見られるごとく、暮らしの全てがお手本だった。
▼彼らはオオカミの猟を真似、皮をまとい、歩き方を真似た。はっきりした個性を持ちながら群に従うオオカミの暮らし方を、彼らの理想とした。北海道のアイヌもヒグマやオオカミをそうした手本として生きてきたんだろうか?

(阿寒アイヌコタンには、こんなチセ(家)も残されてる。風雪に耐えてきた歴史を感じる)
▼表紙のオオカミの瞳がジッとこちらを見ている。哀しい瞳のようでもあれば、凛とした誇りの瞳のようでもある。我々人類は、こうした瞳を取り戻すことはもうないだろう。古い本だがご一読をお勧めしたい。人間の業がよく分る。
そして政治家と言う者の根深い業も…。