【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 蕎麦の “3たて”


(蕎麦好きが続々と集まってくる。外は氷点下だが中は熱気ムンムン)
▼蕎麦は「五穀」には入っていない。疑似穀類に分類される。平安の昔には「食膳にも据えかねる料理」という評価だった。言ってみれば決して豊饒な食べ物じゃないということになる。

(トン、トン、トンとリズムよく蕎麦切りを終えて並べられた生そば。地粉の高い香りがする)
▼だがよく「霧下そば」と言われるように蕎麦は、痩せて、陽辺りが悪く、寒暖差の多い土地でもよく育つ。便利な疑似穀物なので江戸時代には庶民の食文化となった。「たかが蕎麦されど蕎麦」なんである。

▼蕎麦マニアは「蕎麦は3つの“たて”に尽きる」という。“挽きたて”“打ちたて”“茹でたて”というワケである。「種から挽いた粉を、すぐに打ち、そしてその場で茹でて食す。これこそ蕎麦の醍醐味だ」。


(水を加えて揉む。練る。そして集める。すると魔法をかけたように、粉から玉に…)


(のし棒でのす。するとアララッ、四角い生地が…)
▼というわけで「阿寒そば打ちの会」は年2回、手打ちそばの講習会を開いて“3たて”を愉しむ。モチロン粉は自ら育てた蕎麦の地粉。蕎麦好きには贅沢極まりない!そこに招請されたのがそば打ち名人、釧路副市長小松正明氏である。
▼小松氏は、副市長という激務をこなしながら地域振興のイベントや集まりに駆り出され、そば打ちを披露したり指導したりしてる。まさにそば打ちのプロである。プロであるからしてやっぱり説得力のある言葉をもってる。


(蕎麦切りは、手前から向こうへ押して…)
▼「蕎麦はスピード、です!」彼は断言する。蕎麦は「五穀」よりも遥かに繊細、湿度にだって影響されると言う。だから時間がかかると、粉の変化や鮮度などに大きく影響する。さらに、江戸前の文化となった蕎麦のこと、「スピード」には「手際」の良さや「粋」などの所作が当然含まれるものと思われる。

(コシがあって、歯ごたえあって、しかもツルっとしてて…。誰かが「顎が疲れる」と言った。上等品だ)
▼打ち始めて30分。流石である!流れるように10人前の“3たて”は出来上がった。美しい!光沢がある!早速賞味する。コシがある!歯ごたえがある!優しさがある!う〜む、蕎麦ひとつでこれだけ感動するとは…。
▼郷土愛とは自らが住む土地に、誇りを持つことだ。してみれば今回の「阿寒蕎麦打ちの会」は、まさに『郷土愛の“3たて”=「揉みたて」「練りたて」「のしたて」』とは言えまいか。小松副市長、これからも郷土愛育てをよろしくどうぞ!

(暖かい天ぷらそばも美味かった。コチラも“アゴ疲れそば”、絶品だった)