【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 “威嚇”の変形表情は?

※その鳥は「ケ、ケ、ケ、ケ、ケ」と激しく笑った。ワライカセミという鳥である。モチロン、本当に笑ってるわけじゃない。生物学的に言えば啼いたのである。「笑う」という行為は、一応人間だけに見られる感情表現手段だ。
※人間だけ?じゃ人間はなぜ笑うようになったのか?「それは洞穴時代にまで遡ります」と、人類学者は言う。「結論から言ってしまえば、〝笑い”と言う表現手段は“威嚇”という表情の変形名残と考えられます」。

(「山笑ふ」「水も笑ひぬ」観光船 マリモを中心に世界遺産登録をめざす阿寒湖を観光船が悠然と行く)
※「というのも、洞穴時代を迎えた人類が集団で暮らす時、他の動物並みの「攻撃」「親しみ」「服従」「威嚇」などの単純な感情表現だけじゃない、多様なコミュニケーション活動が必要になってきました」。
※「例えば、群のオスたちが食料を持ちこんで来た時、威嚇の表情のまま受け取るわけにはいかない。これは父親オオカミなどが子に餌を持って来た時の母親オオカミが作り出す表情と同じです」。
※「威嚇の表情を何とか和らげようとする行為が顔に笑うための筋肉を造りだし、やがてそれが笑顔と言う表情を造り出したというワケです。つまりは、高度なコミュニケーションのためには笑いが必要だったということですね」

(止まった時が過ぎていく。遠浅の阿寒湖では、北海道固有種アメマスのシーズンだ)
※なるほどね。高度なコミュニケーション手段ね…。そうか、季語にある「山笑ふ」(新緑の山)とは、それと同じことかもしれない。
※昨年の秋以来、“拒絶”と“威嚇”の表情で人を寄せ付けなかった山々が、一斉に芽吹いて丸っこく、柔らかく、ふくよかに膨れ上がってくる。
※先人たちはそこに、「山が笑ふ」という自然の高度なコミュニケーションを見たのかもしれない。う〜む、日本の風土と先人たちの感性は、大したものだ。世界に誇れる文化だと言っていい。