【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

ツルのひと声!

※いやぁ、今朝は寒かった!−22℃はあったんじゃないかい?何しろ“けあらし”(注1)がスゴカッタもんなぁ。寒さに強いワシラでも流石に堪えた。1952年の冬もこんなだったんかねぇ…。

(凍て川の杭となった朝11:00頃、目を覚ましたタンチョウたちは三々五々給餌場へと飛び立つ)
※もしかしたらあの時は−30℃ぐらいあったかもしれない。寒さで餓死寸前の祖先を救ってくれたのは山崎定次郎という人だったという。家族で食べるトウモロコシを分けてくれたと聞く。
※その後、38羽まで減ったワシらを阿寒の住人たちは一生懸命保護してくれた。保護活動は小学校や中学の生徒たちまで巻き込んだ。お蔭で、60年過ぎた今じゃワシらの仲間は1300羽を超え、東京23区がすっぽり入る広い釧路湿原でさえ住宅難になってきたほどだ。

(青空に、家族の絆を確かめあう“鳴き合い”の「ツルのひと声」が町中に響き渡る)
※江戸時代には日本の津々浦々に生息してたワシらの祖先が、一旦は絶滅種となりながらも復興できたのは、ひとえに阿寒の住人達の熱心な活動のお蔭だ。どれだけ感謝しても感謝しきれない。
※今じゃ厳寒の冬でもワシらは給餌場に飛んで行きさえすれば、食餌にありつける!しかもワシらを熱い目で待ってってくれるカメラマンが仰山いる。なんと幸せな時代になったもんだ。

※故山崎定次郎さんは、ワシらがこんな幸せな時代を送れるとは思わなかったかもしれない。「ツルのひと声」を他人にかけることもなく、黙々とワシらの祖先に給餌を続けてくれた。でも、結果としてスバラシイ復興劇の礎になった。
※政治家の皆さん!後世にはそうしたスバラシイ遺産を残してもらいたいね、負の遺産じゃなく。因みにワシらが発する「ツルのひと声」は夫婦や一族の絆を確かめあうための声だ。決して「多くの人の議論や意見をおさえつける、有力者・権威者の一言」なんかじゃない。
※政界トップの方々、くれぐれもお間違いなきように…。我々の生態から、正確な言葉を学んでいただきますように…。

★(注1)「気嵐」と書く。 冷え込みが強まった晴れた日に、冷たい空気が外気温よりも暖かい川や海に流れ込 み、水面上で急激に水蒸気が蒸発し霧が発生することで起こる。 気象用語では「蒸気霧」(じょうきぎり)という。