もう何年前になるだろうか、思わず笑わされたコピーだけの一段広告があった。悲しいことに!広告主も商品もさらにはコピーそのものも、記憶に定かじゃない!だが、記憶の糸を必死で辿るとこんなものだったような気がする。
『骨太の男になれ、と父は言う。だからボクは一生懸命牛乳を飲む』。(正しいコピーをご存知の方、ぜひ教えてください)
それが突然記憶に蘇ったのは実は、トロトロ眠りながら帰道する機上だ。どうしてこのフレーズが記憶の幕を突き破って噴出したのかは、分らない。ただ、先日掌の手術をした際、麻酔から醒めた第一声が、看護師によると「ナポリタンが食いてえ!」だったそうだから、それに似たような回路が働いたのかもしれない。
帰寒した翌朝は、案外暖かった。熊本のドングリの落葉が始まり、紅葉も赤く色付いてはいたが、季節外れのタンポポも咲いてる。
手術痕チェックに病院に行かなくちゃ。「しっかし、何で“骨太の男になれ!”だったのか?」。運転中に素朴な疑問が湧いてくる。
「もしかしたら、空港の待ち時間中に見てたアメリカ大統領選のテレビニュース番組に遠因があったのかも知れん」。
そうだ、それに違いない!昨日、搭乗してからも脳は、グチャグチャと言葉をひねくり回してた。「オバマは小浜。叔母、待つ。旬だ」「マケインは負け因、負け員、季節はずれ」。そうだよね、マケインはもう72歳。金融資本主義が崩壊したアメリカの次代大統領にゃ、申し訳ないけど季節はずれだ。ウチの秋タンポポみたいに。
やっぱり旬は若きオバマ。若い血が滾ってるし、スピーチも抜群だ。肌は黒くても、同じ赤い血が流れてるじゃないか。
同じ赤い血?そう言えば随分前、ケチャップは血の色だなと思ったことがある。それが手術と結びついてナポリタンになっちゃったんだろうか?脳はいろんなものを結びつけて、勝手に新しいイメージを創出してくれる。
「順調に回復してます。今日からは力いっぱい拳を握ってください!それでなくちゃ握れなくなっちゃいますから」。医師は言った。ボクは思った。「ダイジョブ、ダイジョブ、自分の人生は自分で握る積もりですから」。