【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 この世に5次元世界はあるか?

9月10日、大型ハドロン衝突型加速器が稼動したと言うニュースを見た。
この加速器は、かねてからスイスとフランスの国境を跨ぐ、全長27kmというトンネル内に建設されており、光の速さの99.99998%の速さを作り出すことができるという代物。
稼動すれば数ヶ月以内に、宇宙の始まる瞬間や、ブラックホール、5次元の可能性などを探ることができる今世紀最大の実験施設と言われていた。なんと夢のある、ロマンのある設備じゃないか。
だが、上京の直前、夢もロマンもメルトダウンした。トンネル内の装置が溶けてしまったのである。美人物理学者“リサ・ランドール”の「5次元仮説」証明に興味津々だった不肖私は、かなり落胆した。「神は人間が近づくのをなかなか許さない!」
ところが翌日、情況は一変した。『日本人物理学者3人、ノーベル物理学賞受賞』の大きな活字が新聞に躍ったのである。さらに、翌々日にはノーベル化学賞受賞の文字も舞った。
「それにしても、日本人は素粒子に強い!なぜだろう?」。友人のそんな問いかけにしたり顔で、答えてみる。「日本人は般若心経の中で“無”とか“空”とかを知ってるからじゃないか。素粒子は“空”との境目にある物質だからなあ」。勿論、こんなことはおためごかしだ。だが、湯川さんにしろ小柴さんにしろ、確かに日本のノーベル物理学賞素粒子関連が多い。基礎科学の領域に無類の強さを発揮するのだ。こうなると基礎科学が不得手という通説は、的外れもいいとこだ。
最近、理数系能力が低下してると言う指摘や、懸念が喧しいが、実はこれは学力問題じゃなく想像力の醸成、イマジネーションの醸成の欠如、つまり、社会がロマンや宇宙への夢を失ってるということの裏返しと言えそうだ。
そう言えば、経済学賞は相変わらず、アメリカだった。もっとも、経済学賞は実は「スウェーデン王立科学アカデミー経済学賞」というのが正式名称らしい。こちらは金融工学なんてのを妄想した結果、いまや世界金融危機の火種になってる。金を夢見た結果である。化学賞受賞の下山さんが興味あることを言っていた。「子供達にはテレビゲームはダメです。自然と触れ合わせることが必要です。テレビゲームは何も生まない」。
そう、この世の中は、目に見えるモノ、コトだけじゃない。目に見えるものの奥にある夢やロマンを感じたりする力、想像力が大切だ。脳科学者「茂木健一郎」の言う、クオリアとは煎じ詰めればそういうことと言える。
だから、「5次元の世界はあるのか?」と問われれば、答えは「勿論!」だ。そして未来を支える多くの子供達にもそう答えてほしい。