【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

虎刈り草刈

2サイクルエンジンの音がヒステリックに唸る。バリバリと草刈り機が草をなぎ倒す。顔に、口の中に草汁のしぶきが飛んでくる。小石も草の破砕屑も飛んでくる。下半身は屑で緑に染まってる。
いやあ、そりゃあスゴイもんでっせ。壮絶と言ってもいい。朝9:00から始めてもはや13:00。草刈機にも草のしぶきが飛び散りベトベト、ふと、これは雑草や蕗の血液なんだ、などと思ったりする。
う〜ん、やはりな。早く終わりたいためだろうか、不穏なコトバが頭の中でウズを巻き始めた。
「倒せ!倒せ!」。不肖飯沼勇一はかなりおかしくなってる。相当アグレッシブになってる。
比べたくはないが、最近多発する若者の殺人事件で「誰でもいいから、殺したかった」と口述する心境と似ているのだ。
もし行動心理学検査や、脳内伝達物質を測ったとすれば、アドレナリンは頂点に跳ね上がり、血管は膨れ上がっていることだろう。気が付けばアクセルを引っ張りっぱなし、エンジン音が「これでもか!これでか!」とばかりに怒号して、
心を代弁する。暴走族が50ccのバイクをフルスロットルで走らせてる光景を思い出してもらえばいい。
「あと少し!あと少し!いちばん奥の溝の中を刈ったらお終いだ」。
最後のアクセルひと吹かしが終わった。「よかった、終わった、終わった!殺戮が終わった」。
アドレナリンが見事に収まっていく。
みるみる冷静になった。刈った後を振り返ってみる。同居人が家からチェックしに来た。彼女は言った。
「クーさんが刈ったのよりはるかに虎刈りね!」。う〜ん、性格を反映して見事な虎刈りだ。
でも人を狩らなくて、よかった。