【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

「女王様」を釣りたい!

「やっぱり気持ちいいや、最高だなあ。なぜ今まで、釣りに出なかったんだろう」。
理由は二つある。今年は、つい3日前まで夏とはいえない寒さだった。何しろ最高気温が18℃、しかも曇りや雨模様じゃ、いくら酔狂でも釣りなんかに出かける気になんない。「誰だ!北海道には梅雨がない、と言ったヤツは。こりゃまさしく梅雨寒じゃないか」。この一ヶ月はそう毒づいて過ごしてきたのだ。
二番目の理由は、熊だ。今年は熊目撃情報が多い。「子ずれの熊が、道路に立ちふさがってた」。そんな話聞いた後、道路脇には、写真のような熊出没注意の看板。とてもつりに出かける気にならんでしょうが。
だが、だが、昨日は最高気温28℃。万歳、暑い。しかも、今日も昨日と同じく高温予報。いよいよ本格的な夏だ。こうなるともう、ジッとしてらんない。
熊も何するものか、だ。去年と違って、熊除け鈴と爆竹だけじゃなく、サッカーの応援グッズ「ジェットホーン」という新兵器も揃えたんだ。対策は万全・・・の筈だ。
というわけで、一年ぶりに阿寒川で竿を出した。何しろ家から25分もあれば、渓に立てる。でかいヤツを望まなければ、車で5分もかからない。田舎暮らしならではの特権だ。
いきなり目印がグッと引き込まれた。「来た!」。ググーンと竿がのされる。右に、左に、上流に、下流にヤツは走る。「耐えろ!耐えろ!」。自分に言い聞かせながら、竿をためる。思わず腰が入る。「ビューン」。糸鳴りがした途端、ブン!竿が軽くなった。「切れた!」。ため息を吐く。「40cmはあったな」。でも、狙った山女じゃない。間違いなく野生化した虹鱒だ。「いくらでかくてもレインボーじゃなあ、“渓流の女王、山女”とは比較にならん」。藤原正彦じゃないが『魚の品格』が違うんだよ。レインボーは、貪食。粗暴。強靭。まさしくアバズレ女。女王様を追い払い、蹴散らしているのが実態だ。放蕩無頼の女。サケ・マスの稚魚にとっては害魚に他ならない。お陰でこのところ、日本の渓流の生態系は、随分おかしくなったしまった。
「アバズレ女じゃなく、女王様を釣りたい!」だが、その後も釣れてくるのは、アバズレばかり。2時間の間に、写真の3倍の数を釣ってしまった。隣人に上げる約束があったので、少しだけ持ち帰ったのだが、結局、女王様は釣れなかった。どうやら、日本からは、いや阿寒川からは、女王様の数が激減してるらしい。もはや、ここでも放流が必要になってきたのだろうか?えらいこっちゃ!