【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 フォト五七五

道具は人の生き方を変える。車がそうである。パソコンがそうである。
ケータイやカメラ、ビデオカメラもそうである。道具の歴史は人の生き方の歴史である。
NHKに「カシャッと一句―フォト五七五」という番組がある。毎週月曜10:00〜10:25放送。
写真と俳句との組み合わせで、新しい表現の世界を切り開こうと言う試みで、選者はフォトエディターの板見浩史氏、講談師の神田京子氏、女優の宮本真希氏など。タレントの伊集院光氏が司会役をしている。
「俳句というものは、カメラと同じ。眼の中に入った瞬間を切り取って素直に17文字で表現するものだ」。
達人からそんな風に教わった自分には、結構な違和感があった。だが、意外や意外、毎週発表される作品に唸らせられるシーンが増えてきた。
「先写後句」「先句後写」などの制作プロセスも紹介され、音楽の作詞・作曲と同じ、妙に新しい表現世界を切り拓いているのである。

この番組には中高年の投稿が殺到しているという。
「夫婦の共通の趣味として」とか「旅行にはこれが欠かせない」とか理由はいろいろだが、彼らの表現意欲を支えてるのは間違いなく、車であり、カメラであり、パソコンといった道具である。
だが、構えるレンズの先には自然があり、人々の生活があり、そして感光板には鋭い五感があることも間違いない。
文豪夏目漱石は、偉大な俳人でもあった。こんな名句をつくっている。
・菫ほど小さき人に生まれたし
野に咲く菫を、権威や権力に組しない自然の小さく偉大な存在として、鮮やかに切り取った一句である。漱石はこの名句をカメラでなく、鋭い五感で捉えた。
フォト五七五は、これからどんな世界を切り拓いていけるだろうか?
因みに先のミズバショウで一句詠んでみた。
・野遊びや秘密の場所は教えずに (・・・オソマツ)
あなたならどんな句を読むだろうか。