【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 釧路・貝の化石の呟き!

「ワッツ!眩しやないか!何や今の光は?折角“太陽さん”出て、ウトウトしてたのに。エッ、撮影やって?何のためや?ワッツ、もう止めにせんか!人権侵害も甚だしやないか!」
「大体、ワシャここに連れてこられたのが心外なんや。
今まで一万年、いやそれ以上かな、ともかく長〜い間、ワシラは時間やら関係なしに穏やかに眠ってたのんに、いきなり叩き起こされた。それだけでも迷惑なんに、こんな虐待受けるのん、許せん!」
「おじいちゃん、ボクにも言わせて!あの日のこと良く覚えてるよ。ボクがおじいちゃんの隣で眠ってたら、ガーンと音がしてボクラを護ってた岩の布団がはがされちゃったんだよね。で、何がどうしたか分らないうちに、ビニール袋でここに連れてこられた。ボクだってここにいるのはイヤなんだ」
「大体、ワシラをここに連れてきたヌマピーちゅう男が悪い!
連れてきた当時は多少ワシラに注目してたっけ、そん後は埃まみれの本棚に放っぽりぱなしやないか。なまら腹立つ!お陰でワシ、ヘンな大阪弁とヘンな北海道弁、ごっちゃ混ぜに覚えてしもたやないか」
「でもおじいちゃん、ここへ来て随分いろんなこと覚えたね。人間の言葉や人間の勝手さ、それに時代なんてのがあることもさあ。それだけは少し良かったかなあ、あのままだとずう〜と、舌辛川(したからがわ)の岸で眠ったままだったかもしれない。
あ、ヌマピーがジッとコッチを覗き込んでるよ、おじいちゃん、得意の読心術で奴の心読んでみてよ!」
「アホッ、これは読心術やない!波動っちゅうレッキとしたサイエンスや。
チョッと待て、ナニナニ、ワシラ化石を掘り出す“化石発掘ツアー”と言うのんを企画するんやて?日本中から子ども、父兄を呼んで町おこし?釧路湿原の成り立ち実体験させて、温暖化の意識を高めさせるんやと?なかなかいいこと考えてるやんか?
せやけど、この男思いつきはいいが、実行力ないさかいナ。ワシらを連れ帰った時だって、考古学者に相談しようと思ってて、1年3ヶ月も何もせんかったやないか!
やめとき、やめとき、実行力ないお前にできるもんか。それよりもっと緊急にやるべきことあるやないか!
世の中、金融危機やとか雇用不安やとか100年に1度の不景気やとか、問題だらけやないか!もう少し世の中に役立つこと、やるべきことあるんやないか?
そりゃあメジャーになるのはワシラかて嬉しい。でもな、もうチョッと大きいこと考えい。ワシラみたいに一万年経ってようやく、お役に立つことやってあるんや!
来年は丑年や。それこそ腰据えて1歩、1歩じっくり行かんとナ!