【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 基地を移転せず! 

「ピーヒョロロ〜」。
北風に乗ってトビの鳴き声が聞こえる。見上げると、いつものトビが上昇気流に乗って悠然と旋回してる。気流を掴む翼の悠然たる動き、尾羽による微妙な操舵・・・。
自力で翔ぶ訳でもなく、風に翔ばされてる訳でもない。鳥人たちが望むのは、こういう翔び方に違いない。
だが、トビにとって青空は主戦場だ。人には悠然と見えても、あれで生命を賭けて翔んでいるらしい。
事実、彼は殆ど毎日の如くカラス軍団に襲われる。カラスは、まるで飛行船のようにゆっくりと翔ぶトビに、戦闘機のように襲い掛かるのだ。一羽の時もあれば、数羽の時もある。
この戦闘機攻撃に対して飛行船トビは、あきらかに慌てて回避行動に出る。冷や汗を掻きながら右往左往している様が、地上からもはっきり読み取れるのである。
カラス軍団はしつこく攻撃を掛ける。トビは大抵、白旗を掲げて裏山基地近くの大樹に身を寄せる。やがて制空権を確保したと思ったカラス軍団は、いずれかの基地へ戻って行った。
こういう姿はトビへの愛情を刺激し、カラスをますますキライにさせる。
ふと、永田町の鳩のことを思い出した。あの鳩もカラスの空を必死で翔んでるんだろうなぁ。
暫くしてトビは再び悠然と空を翔び始めた。あれだけ攻撃されても基地を移転する気はないらしい。
「ピーヒョロロ〜」。トビはあれで、結構頑固で、孤独なんである。