SFファンタジー作家「レイ・ブラッドベリ」の短編には、水星が舞台のストーリーがよく登場する。例えばこんな具合だ。
一週間は雨で始まり、雨で終る。雨は延々と降り続き子ども達を閉じ込める。ただ、1日のうちホンの1時間だけ太陽が出る。子ども達は、嬉々として表に出て跳ね回る。その太陽の眩しいこと!
だが1時間後には、また雨が降り出し、子ども達は重い足取りで校舎に戻る。また、雨に閉じ込められるのだ・・・。
最近の阿寒は、ツツジが満開になったのに、まさしくそんな情況だ。この2週間、殆ど陽差しがない。「天気予報です。大雨のち雨、雨、大雨、曇り、大雨でしょう」状態なのである。
何とかナンナイのか!イライラが募る中嬉しいことに、雨の中の12時間があった。
“NA Hoku Hanohano BASH in 釧路”というハワイアン・イベントを実施した。口をかみそうな長いタイトルだが、何てことはない、『星空のもと、皆で集まりワイワイ演ろう』というのが主旨だ。
共催は「ハワイ音楽研究会ML」。北里大学OBが立ち上げたメーリングリストの会である。年に2〜3回、日本各地やハワイで顔を合わせ、この時とばかりに、演奏とフラで大いに盛り上がる。
次は釧路でやりたい、と2月にもちかけられた。「釧路でハワイアンかい?寒いからねえ・・・」というのが、大体の反応。
そう、釧路の海は冷たくって、夏でも入れやしない。常夏のノーテンキなハワイアンどころじゃないのだ。だが、実行委員長の不肖ワタクシは、断固決意した。
大体ハワイアンは、ハワイの先住民族の民謡がもとだ。北海道にも先住民族アイヌの音楽、文化がある。
「よし!ハワイとアイヌの先住民族交流のきっかけつくろう!」。将来は阿寒湖畔で「先住民族サミット」を開こう!
こうして身は小さいが、志の稀有壮大な計画はスタートした。新しい音楽文化、「ノーザン・ハワイアン」の開発!である。
6月20日。開催日。愛知、滋賀、埼玉、東京、札幌、旭川、釧路・・・総勢33名が集まった。フラガール、ウクレレ弾き、ギター奏者、ベースマン、ヴォーカル、スチール奏者・・・。
いずれも「アロ〜ハ」な眼差しをしてる。
吃驚したのは、自分も含めて釧路のスチール弾きが多いこと。1人当たりの人口比で行けば、東京より多いことは間違いない。
12:00に開場する。「これから、延々12時間のマラソンライブの幕開けだ」。
いきなりトップスピードに入った。啼くスチール、笑うウクレレ、ドライブするベース、走るギター・・・。ジャムが始まる、フラガールが腰を振る。殆どが知ってる曲ばかりだ。
アドレナリンとドーパミンが交互に噴出する。瞬きしてる間に、4時間が過ぎる。
少し疲れたな、と思ったらすでに6:30だった。でも安心、まだ5時間半はある。
ステージは佳境に入ってきた。1人がステージを降りると2人が登る。完全にハワイ漬けである。「久しぶりだなあ」息抜きタイムは地元のジャズバンド。休みというのがないのかねえ、このライブは。時間さえ許せば、倒れるまで延々と続く気さえしてきた。
しっかし、こんなことではしゃぎまわってる我々は、馬鹿なんじゃないか?
こんなことで、果たして稀有壮大な計画は達成できるんだろうか?
ま、“愚行を重ねれば賢者となるを得ん”だ!
こうした馬鹿者達が、楽しみながら小さな活動を続けて行くことで、町おこしや地域おこしが突然大きな津波になるのかもしれない。
酔いが回ってくるにしたがって、時間の感覚が薄れていく。老化現象だろうか?
嬉しいことに、アチラコチラで交流が始まってる。これでいいのさ、リクツはナシだ!
ついに24:00。終了の鐘がなった。「さあさ、お祭はお終いだ。もう帰って寝ておくれ!」。ハワイの神様はそういった。「アロ〜ハ〜」。だが、オジサンも、フラガールもなかなか普段の顔に戻れない。その眼は、「寝ちゃうのがもったいない!」と言ってる。後はどうなるのか?
翌朝、酔眼朦朧で軒下に四つ葉のクローバーを発見した。
「ノーザン・ハワイアン」は、「先住民族サミット」という壮大稀有な計画の実現に向けて、役割を果たせるのかなあ。窓の外はまたまた大雨だ。
追)この饗宴は、昨日の北海道新聞釧路版夕刊に記事が掲載された。記者さん、ありがとう。そして参加者の皆さん、お疲れ様でした。