【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

硫黄山、霧多布、納沙布!

「本日は道東の旅にようこそお越しくださいました。もう見学された観光地はおありですか?
エッ、摩周湖と硫黄山?そうですかぁ、摩周湖は如何でした?神秘的な体験をされた?それはよかったですね。
で、硫黄山は?ああ、地球の鼓動を感じられたわけですね」。

「チョッとだけご説明させていただきますと硫黄山は、アイヌ語アトサヌプリと言いまして、裸の山という意味なんです。
3万年ほど前から活動してまして、1500年ほど前の噴火でできた溶岩ドームがご覧になった山です。硫黄蒸気の噴出がすごかったでしょう?まるで地球のストレスの吐き出し口みたい。いまでも活火山のひとつなんですよ」。
「そちらをご覧済みなら、じゃぁ、今日は観光ルートにはあまり入っていない道東の海のほうへご案内しましょう。北海道らしい風景をご覧いただけますよ」。

随分走りましたが、ようやく到着しました。涙岬です。ここは牡蠣で有名な厚岸(あっけし)から太平洋シーサイドラインを約20km。知る人ぞ知る断崖の名所です。
厚岸の若者と霧多布(きりたっぷ)の網元の娘の悲恋伝説があり、左手の海の中に立っている岩が、歩いて娘の下に通おうとする若者の姿(立岩)、右手の崖はその若者の遭難死を嘆く娘の姿(涙岩)です。
舟の遭難と言う自然の厳しさが伝説と風景から伝わってきますね。ホラ御覧なさい。高山植物がいっぱい咲いてます」。
「では、お次はここから20kmほどの霧多布(きりたっぷ)岬。
実は、湿原で有名なんですが、少し先を急ぐので岬を見るだけにしましょう。
霧多布岬は読んで字の如し、霧が多い岬です。本当は湯沸岬と言うのですが、いつの間にかそういう呼び名になりました。太平洋に突き出している岬です。この岬の何千キロか先に、アメリカ大陸があると思うと海で繋がってることを実感しますよね」。

「少しお疲れになりました?もう180kmは走ってますからね。でも、どうしても次を見て置いていただかなければなりません。納沙布(のさっぷ)岬です。
何しろ離島を除けば、日本列島で最東端にある岬、根室の少し先になります。
北方四島返還に関してこの岬を見ずして語れませんからね。でも残念ながら、日本人は大して関心を持ってない!資源などから言っても実は大変なことなんですよ、領土問題は。ぜひ関心を持っていただかなくては!」。
「お待たせしました、到着しました。どうですか?寒い!ですって?いや、そうじゃなくて、この光景を見てどう思いますか?
あれが国後(クナシリ)、あれが択捉(エトロフ)、近いでしょ?
手が届きそうだけど、ロシア領なんですよ。第二次世界大戦終了直後のドサクサにまぎれて分捕ってちまった!あらッ、失礼、ついコーフンして汚い言葉を。でも間違いなく火事場ドロボーですよ、しかも国際的な、ね。言いたいことはゴマンとあるけど、お客様のご感想はどうですか?

無力感・・・ですかぁ、プーチンが大統領に返り咲いたら、絶対戻ってこないですって?まあ、お若いのに、刺激的な意見をお持ちですねぇ。
でもこの光景をお見せできてヨカッタ!ここにご案内しないと、これからの日本は語れない!貴女のようなお若い世代がこの現実を踏まえて、国としての日本の進路を考えていっていただだきたいのですよ、あそこに四島返還のモニュメントがあるでしょう?」。
「ところで、駆け足でしたが如何でした、道東海の旅?
も一度ゆっくり来たいですって。ヨカッタ!ヨカッタ!ぜひまたお越しください。お友だちにも道東の感想を伝えてくださいね。道東の観光セールスレディになってください。
それにしてもよく走りましたね、1日で453kmですよ。北海道はでっかいどー、でしょ」。