【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 空気が凍りつく!

「タイヘンです!貴方の政治資金に関するリークがありました!」
その瞬間、執務室の空気は凍りついた。事情を知っている数人の男達も固まって動けなかった。「エライことになるぞ!」
というように、「空気が凍りつく」という言葉は、異様な緊張が走ったときの象徴的な表現としてよく使われる。流動自由な気体である空気が、その場所では固体化して動かなくなってしまうように感じられる時の表現である。
だが、本当に「空気が凍りつく」自然現象だってある。まさしく空気がFreezeしたと思える現象だ。
写真は、−6℃の朝、車の窓ガラスに付着してた結晶である。放射冷却現象の影響を受けたと思われる。
顕微鏡で見たわけじゃないから断定は出来ないが、雪の結晶とも何だか違う。波動科学者「江本勝」が撮影した水の結晶とも違う。これは氷の結晶じゃなく、空気の結晶と思うことにした。
「バカ言え、コイツは空気に溶け込んでる水成分が気温の低下によって氷化したものだ。だから水の結晶だよ」なんて野暮なことは言うまい。そう、これは空気の結晶だ!

空気の結晶はキレイだ。この結晶の素が、365日24時間、自分を、そしてあらゆる人と、地球を取り巻いてるのだ。実にファンタジーなことではないか。それが肺の中に入ったり出たりしてるのである。寒さは、時として人間と地球について深い思索のヒントをくれる。
チョッと嬉しくなったので、ボンネットに指で文字を書いてみた。空気の結晶に自分の指紋を残してみたいという衝動に駆られたのだ。
気分が高揚してたのかもしれない。かつて観た映画のワンシーンを思い出した。女が別れ際、窓ガラスに真っ赤な口紅で「I Love You」と書き残して行ったシーンだ。覚えてる人がいるかもしれない。なんともセクシーなシーンだった。
落書きして10分ほど後、太陽が当たってきた。暖かい陽射しが辺り一帯を覆う。ボンネットも陽だまりの中に入った。
見る見るうちに、空気の結晶は涙を流して溶け始めた。まるで記録と記憶、さらにシャッターチャンスを待ってる時間を溶かしてるようでもある。
太陽の力は偉大だ!
ジッと眺めてると、家の中から原理主義者の声が聞こえた。「何してるの!ゴミは出したの!」
・・・いやはや、折角溶け始めた空気が、再び凍りつきそうだ。