【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 アイヌ語「年老いたヌマ」

阿寒湖の西の山奥に、「年老いた沼」、「大きな沼」がある。友人のブログにはそう書いてあった。
「年老いたヌマ」・・・。阿寒湖からは近いというのに、まだ見たことがない。灯台下暗し、どんなヌマだろう。日頃、友人達から“ヌマさん”とか“ヌマちゃん”と呼ばれてる身としては気になる。もう少し年老いたら、“ヌマ”(自分)は、どういう“ヌマ”になっちゃうのか?見てみたい!
「全面結氷する前がいい」。友人はそうも教えてくれた。「それじゃ、今日しかないじゃん!」何はともあれ、車に乗った。
1時間15分後、「年老いた沼」にいた。アイヌ語で「オンネトー」という。「オンネ」は年老いたとか、大きな、などの意味、「トー」は沼、湖などと言われている。したがって「オンネトー」は大きな湖という意味にもなるらしい。
オンネトー」はすでに全面結氷してた。活火山の雌阿寒岳(1499m)が左に、阿寒富士(1476m)は右に、見下ろすように屹立してる。何だか富士五湖のうちのひとつ、精進湖みたいな気がしないでもない。
それにしても怖いほどに静寂だ。沈黙。時間停止。神(カムイ)の気配が当たり一面に満ちている。鼻から、毛穴から深々と神の気配が沁みこんでくる。
アイヌ語地名研究者の第一人者だった、山田秀三さんという人がいた。故山田さんは、アイヌ語地名のほとんどは山川草木など自然の地形名であり、「うそのない」命名だと記した。
昨年環境サミットが開催された「洞爺湖」は「トー」(湖)「ヤ」(岸)ということになるそうだ。山田さんの指摘するように、シンプルそのものである。
だが、明治以後移住した人々は、文字を持たなかったアイヌ語に漢字標記の当て字を思いついた。
羅臼(ラウス)など、アイヌ語の「音」を活かして、漢字を当てたもの ●神威(カムイ)など、アイヌ語の「意味」を解釈し、似た意味の日本語を割り当てたもの、の二種類あるとのことだが、時代が経つにつれて、いや、もともと移住者達の利便に基づいて行った当て字ゆえ、ワケの分らぬものとなってしまった。
“札幌”には(水の少ない・大きい・川)など諸説あるが、もはや由来は殆ど分らない。“阿寒”も同じだ。

すでに閉鎖されてる「オンネトー茶屋」まで行くことにした。暫く進んだ山道の角を曲がると、思わずハッと息を呑んだ。言うべき言葉も失った。
目の前に突然、エメラルドグリーンの湖面が出現したのだ。言い尽くし難い神秘的な美しさだった。
湖底に温泉でもあるのだろうか、この一部だけが結氷していない。
アイヌ語でこの神秘的な美しさをどう表現するだろうか?「カムイトー」(神の湖)とでも言うのだろうか?アイヌ語を思い付かないのがもどかしい。アイヌ語、少し覚えよう・・・。