【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 発掘、感謝!

「おやおや、今日は妙に騒がしい。何かあるんだろうか?ヤ、ヤ、どうやら沢山の車が来たらしいぞ。もしかしたらワシラを発掘しに来たのかも知れん。それならウレシイ。何しろワシラがここに居ついてから500万年も経ってるんじゃからな、ワシも相当退屈してた。
エッ、ワシの名前?『タカハシ・ホタテ爺』。絶滅してから200万年もたってる、ホタテ貝の先祖じゃよ。
ヤ、ヤ、本当にワシラを発掘しに来たらしい。ハンマーやノミも持ってるぞ。ん?釧路市の博物館の学芸員とその仲間たちだって?10人はいるなぁ。これで、ワシも500万年後のシャバにデビューできるかも知れん。
いや、ソッチじゃない、ここや、ここや。そうそう、その腰の下のほうから掘り進めてくれれば意外に簡単に掘り出せると思うよ。ハンマーの新藤が伝わってくるなあ。

痛い!痛いやないか!そこは頭の方や、割れちまうで。ちゃう、ちゃう、そこは腹のところや、こすばっこい。一体、人間共は化石堀のこと、何と心得てるんや。ワシらは繊細なんや、チョッとでもヒビが入ると壊れちまう。何しろ猛烈な地圧の中に閉じ込められてたんやからな。
オッ、上手く剥がれそうだ。お願いだからそっとね。そお〜っと、そお〜っと・・。バンザ〜イ、剥がれた。500万年ぶりの自由だ。
う〜ん、いい空気だ。ありがとう、これでワシラの存在を世間に知らしむることが出来るわい。何しろワシラの存在は、阿寒シェル鉱山を知る人間だけに限られてたからなぁ。

ワシラの間を染み透る鉱山水たちと別れにゃならんのはちと寂しいが、なあに、日本有数のミネラルウォーターのことだ、またいずれの日にか脚光を浴びる日が来るだろう。そうすればワシラが水にもお役に立ってることが周知されるはずだ。いまはまず、世間に知られることだ!