【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

“ユック・ステーキ”

▼“地産地消”という造語を最初に標榜したのは、秋田県河辺町だという。(「食の文化」1984年2月号)もともとは、1981年から農水省死活改善課(当時)が4年計画で実施した「地域内食生活向上対策事業」から生まれた。
▼農村での不足栄養素を補う農業生産品を、他地域からの購入に頼るのではなく、地元で作るというのがその趣旨である。背景には、外国製品からタンパク質などの不足栄養素を補うことになるとエンゲル係数の暴騰を招くという当時の農水省の危機感があった。
▼その後、気候変動に弱い稲作モノカルチャーからの脱皮、減反政策に対する野菜生産など多様性の確保、外国製品に対する競争力の強化、食料自給率の向上などさまざまな要素を取り入れ、最近では「CO2の削減」や「食の安全」も概念の中に含まれるようになった。

▼“地産地消”という言葉がここまで価値観をリードすることができたのは、農水省や農業関係者の危機感と、消費者の思いのマッチングがあったからだろう。だとしたら、エゾシカの増えすぎに頭を痛める北海道でも、言葉の力を信じてみてはどうか?
アイヌ語でシカのことを“ユック”という。「エゾシカ」などと、“エゾ”さえ付ければ道産ものになる安易なネーミングとは違って、素直で素材に沿ったネーミングだ。これを「エゾシカ」が絡むすべてのネーミングに採用してはどうか?世界でも貴重なアイヌ文化を広げることにも役立つ。
▼因みに昨夜は、オーヤギさんが持ってきてくれた“ユック・ステーキ”だった。バターもジャガイモもパンも北海道産、すべて“地産地消”である。ただ、ステーキのタレだけは本州産だった。
▼ロースの厚さ5cmブロック肉隗を4個、200g以上はあったろう。外側を炙ったレアの肉隗は、口の中でとろける。美味かった。しあわせだった。こういうものを食べられるのは、北海道にいるからだ。ユックとカムイとオーヤギさんに感謝!