【スローライフ阿寒】

自然の中に置かれると人は何を、どう、考えるのか、ゆっくり対話しながら生きたい

 旅人!

▼その旅人とは、いつものウォーキングロードで出会った。最初は路上生活者かな、と思った。新宿の駅周辺でよく見かけたように、家財道具一式を持ってママチャリで漂流してるように見えたからだ。
▼「コンチハ、何撮ってるの?」彼は、人懐こそうに話しかけてきた。カメラを胸からブル下げて歩いてた自分を見たせいだろう。「いやぁ、ウグイス狙ってるんだけど一枚も撮れない…」と答えると、「ウグイスは小っちゃいし、早いからなぁ」との返し!さてはカメラマンか…?荷物籠の中に、ペンタックスの500mm以上のレンズが見える。案の定だ!

(恥を忍んでアップロードする。真ん中にウグイスのようなものがいるのをおわかりになるだろうか)
▼大阪から来てると彼は言った。「毎年、タンチョウの子育てを狙ってる。去年は6か月ほど道東にいた」。流石にふんだんな情報を持っている。「今年は、例年に比べると雛が少ないみたい。大雨でみな流されちゃったのかもしれない」
▼一時間弱も彼のタンチョウ知識と営巣情報に耳を傾けた。分かったのは、彼がタンチョウ撮影に情熱を傾け、その写真で食べてるらしい…。そして二拠点生活者でもある、ということだった。

津軽海峡を越えて来たヒヨドリ。彼らは生まれつき二拠点生活者である…)
▼「それなら、こちらに移住しちゃえばいいじゃないかと言われるけど、それは違う」。彼は言った。「旅人じゃなくちゃダメだ。当たり前の光景になったら、3年ぐらいで目が錆びちゃうんだ。目が錆びたらお終いだ」そうか、そういうもんかも知れんなぁ…。「何時かまた、どこかで…」そう言って彼は、ママチャリを漕いで去って行った。
▼近くの枝にかすかな音を立ててヒヨドリがとまった。先程のサスライのカメラマンと渡り鳥ヒヨドリのイメージがダブったのかもしれない、ふと芭蕉の「おくのほそ道」を思い出した。「月日は百代の過客にして行きかふ年も又旅人也」かぁ…。何だか切ないような気分に襲われた。「春愁」というやつかもしれない…。